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名古屋高等裁判所 平成10年(ネ)992号 判決 1999年5月31日

控訴人(附帯被控訴人、以下「控訴人」という。)(原告) X1

控訴人(原告) X2

控訴人(原告) X3

右三名訴訟代表者弁護士 水野幹男

同 西尾弘美

被控訴人(附帯控訴人、以下「被控訴人」という。)(被告) 秋田運輸株式会社

右代表者代表取締役 A

右訴訟代理人弁護士 二村豈則

主文

一  原判決を左のとおり変更する。

二  被控訴人は、控訴人X1に対し九〇一万一九六〇円、控訴人X2及び控訴人X3に対し各四五〇万五九八〇円並びにこれらに対する昭和六三年一一月二六日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  本件附帯控訴をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は、第一、二審を通じ、これを三分し、その一を控訴人らの負担とし、その余を被控訴人の負担とする。

六  この判決は、控訴人ら勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一当事者の求める裁判

(平成一〇年(ネ)第八五六号事件)

一  控訴人ら

1  原判決を次のとおり変更する。

(一)(1) 被控訴人は、控訴人X1(以下「控訴人X1」という。)に対し七〇〇万円及びこれに対する昭和六三年一一月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(2) 被控訴人は、控訴人X2(以下「控訴人X2」という。)及び控訴人X3(以下「控訴人X3」という。)に対し各三五〇万円及びこれらに対する昭和六三年一一月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(二) (1)、(2)を選択的に求める。

(1) 被控訴人は、控訴人X1に対し一〇〇〇万円及びこれに対する昭和六三年一一月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

被控訴人は、控訴人X2及び控訴人X3に対し各五〇〇万円及びこれらに対する昭和六三年一一月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(2) 被控訴人は、控訴人X1に対し二〇〇〇万円及びこれに対する昭和六三年一一月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

3  仮執行宣言

二  被控訴人

1  控訴人らの控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

(平成一〇年(ネ)第九九二号事件)

一  被控訴人

1  原判決中被控訴人敗訴部分を取り消す。

2  控訴人らの請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は、第一、二審とも、控訴人らの負担とする。

二  控訴人ら

1  本件附帯控訴をいずれも棄却する。

2  附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。

第二当事者の主張

次のとおり補正するほか、原判決の「事実」欄の「第二 当事者の主張」の記載を引用する。

一  原判決七頁五行目末尾に「なお、右自損事故保険金について控訴人X1は、保険代理店のBに対し、保険金請求手続の委任状に署名押印して、これを交付した。」を付加する。

二  原判決二八頁一行目から同二九頁六行目までを次のとおり訂正する。

「5 以上のとおりであるから、

(一)  本件自動車保険契約による自損事故保険金一四〇〇万円については、被控訴人がこれを取得し、控訴人らは三井海上に対し支払請求する権利を失ったので、被控訴人は、控訴人らに対し、不当利得として、控訴人らの相続分により返還する義務があり(前記2(一)、3)、

(二)  本件団体定期保険契約による保険金二〇〇〇万円については、

(1) Cと被控訴人間におけるCの相続人に支払う旨の合意(前記4(一))、被控訴人のC(又はその相続人)に対する保険金請求権付与の意思表示(前記4(二))、被控訴人の不当利得返還義務(掛金をCが負担し、その一部を被控訴人が援助したいわゆる甲グループ保険で、Cの相続人において取得すべき権利がある。前記4(四))、事務管理(前記4(五))、準事務管理(前記4(六))及び弔慰金規定の制定(前記4(七))に基づき、被控訴人は、受領した本件団体定期保険契約による保険金を、控訴人らに対し、その相続分により引き渡すべき義務があり、

(2) 又は、右(1)の場合、保険金の受取人を被控訴人とする指定が無効のときは、Cの配偶者である控訴人X1に対し保険金の全額を引き渡すべき義務がある(前記4(三))。

6 被控訴人は、控訴人らに対し、当面の生活費及び香典として合計一八二万二九四〇円を支払った。

7 よって、控訴人らは被控訴人に対し、(一)本件自動車保険契約による自損事故保険金につき、控訴人X1に七〇〇万円、控訴人X2及び控訴人X3に各三五〇万円、(二)本件団体定期保険契約による保険金につき、(1)控訴人X1に一〇〇〇万円、控訴人X2及び控訴人X3に各五〇〇万円、(2)又は控訴人X1に二〇〇〇万円並びにこれらに対する被控訴人が右保険金を受領した後である昭和六三年一一月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。」

三  同四二頁八行目の「5」を「6」と訂正し、同一一行目の「(相殺及び弁済)」を削除し、同四三頁一〇行目と一一行目との間に次のとおり付加する。

「2 前記二4(一)のとおり、被控訴人はCとの間にした合意に基づき、本件団体定期保険契約の保険金を右求償債権に充当した。」

四  同四三頁一一行目の「(三)」を「3」と訂正し、同四四頁二行目と三行目との間に次のとおり付加し、同三行目の「2」を「5」と訂正する。

「4 前記二5(一)のとおり、被控訴人は控訴人らとの間にした本件自動車保険契約による自損事故保険金をもって、本件事故による被控訴人の損害を補てんする旨の和解(示談)合意に基づき、右求償債権の補てんに充てた。」

五  同四八頁二行目と三行目との間に次のとおり付加し、同頁三行目の「3 抗弁2」を「4 抗弁5」と訂正する。

「3 抗弁2の合意及び抗弁4の和解(示談)の合意はいずれも否認する。」

六  同五八頁一〇行目の「本件死亡事故」を「本件事故」と訂正する。

第三当裁判所の判断

一  次のとおり補正するほか、原判決の「理由」欄の一ないし四の記載を引用する。

1  原判決六五頁一〇行目の「請求原因」の次に「及び抗弁2、4」を、同六八頁四行目の「主張し」の次に「(抗弁4)」を、同六九頁八行目と九行目との間に次のとおり各付加する。

「してみると、本件自動車保険契約に基づく自損事故保険金については、被控訴人が受領したこと及び控訴人らが被控訴人に右受領手続を委任していることは争いなく、右によれば、控訴人らは三井海上に対しては右保険金請求権を主張できないというほかないところ、被控訴人のもとに右保険金をとどめるべき法律上の原因があることを認めるに足りる証拠がないので、被控訴人は控訴人らに対し、右を返還する義務がある。」

2  同七一頁一行目の「主張し」の次に「(抗弁2)」を付加する。

3  同七五頁三行目の「首肯し難い」から同四行目の「である。」までを「首肯し難く、それに沿う前記原審における証人B及び被控訴人代表者本人の各供述は採用できない。」と訂正する。

4  同七六頁五行目の「なったCに対し、」を「なることに同意したCに対し、右保険契約締結時に、」と、同七行目の「約したものと解する」を「約したものと認める(請求原因4(一))」と各訂正する。

5  同七九頁一行目の「同人の」から同八〇頁九行目までを次のとおり訂正する。

「(一)前記のように本件団体定期保険の保険料月額三〇〇〇円中、Cが一〇〇〇円を負担していたところ、証拠(甲第八号証の二、第二六号証、第二八号証)によれば、保険契約者が被控訴人であったこともあり、Cは所得税法上の生命保険料控除を受けることはできず、他方被控訴人はその負担保険料を経費として計上したうえ、明治生命から右月額三〇〇〇円の掛金に対する配当金を受領していることが認められることに照らすと、右保険金額合計二〇〇〇万円のうち、少なくとも右掛金の負担割合である三分の一強に相当する七〇〇万円は、まずCの遺族に支払われるべきものであることが明らかであり、(二)更に右額を控除した保険金の残一三〇〇万円については、Cの被控訴人における運転手としての稼働年数が約七年であること、同人の昭和六二年度の年間給与及び賞与等の総額が四五三万九〇〇〇円であること(甲第二六号証)、また企業における弔慰金のおよその支給水準(甲第一五号証)及び前記被控訴人における弔慰金規定などに、弔慰金支給の付保目的を併せ考慮するときは、本件においては、右保険金一三〇〇万円の二分の一に当る六五〇万円を下らぬ額がCの遺族である控訴人らに支払われるのが相当であると認められ、右判断を左右するに足りる証拠はない。」

6  同八二頁二行目の「七〇〇万円」を「前記のとおり一三五〇万円(七〇〇万円及び六五〇万円の合計)」と訂正する。

7  同八三頁三行目の「相殺の抗弁」の次に「(抗弁3)」を、同九〇頁三行目の「ことになる」の次に「(相殺の具体的計算については後記四記載のとおり)」を各付加する。

8  同九八頁一一行目の「認められない(」を「認められないうえ、訴訟上の相殺の抗弁に対し更に訴訟上の相殺の主張をすることは許されない(最高裁平成一〇年四月三〇日判決民集五二巻三号九三〇頁、」と訂正する。

9  同九九頁六行目の「すべきものと解され」を「するのが相当であり(再抗弁1)」と訂正し、同七行目及び九行目の「三割五分」を各「四割」と、同一〇行目の「六三三万三三二〇円」を「七二三万八〇八〇円」と各訂正する。

10  同頁一一行目の「自損事故保険金」の前に「不当利得の返還として」を、同一〇〇頁一行目の「本件団体定期保険契約」の前に「Cと被控訴人との合意に基づき」を各付加し、同二行目の「七〇〇万円」を「一三五〇万円」と、同五行目の「(抗弁2)」を「(抗弁5)」と、同行目から六行目にかけての「四七六万二〇〇〇円になる。」を「一一二六万二〇〇〇円になるので同額の支払義務が、それぞれあることになる。」と各訂正する。

11  同一〇〇頁七行目の「前記求償権」の次に「(七二三万八〇八〇円)」を、同九行目の「明らかであるが」の次に「(抗弁3)」を各付加し、同一〇一頁一行目の「七六六万六六八〇円」を「六七六万一九二〇円」と、同二行目の「一二四二万八六八〇円」を「一八〇二万三九二〇円(六七六万一九二〇円+一一二六万二〇〇〇円)」と、同四行目の「六二一万四三四〇円」を「九〇一万一九六〇円」と、同五行目の「三一〇万七一七〇円」を「四五〇万五九八〇円」と各訂正する。

12  同一〇一頁七行目から一一行目までを削除する。

二  よって、控訴人らの請求は、本件自動車保険契約による自損事故保険金及び本件団体定期保険契約による保険金のうち、控訴人X1に対し九〇一万一九六〇円、控訴人X2及び控訴人X3に対し各四五〇万五九八〇円並びにこれらに対する本件自動車保険契約による自損事故保険金及び本件団体定期保険契約による保険金が被控訴人に支払われた後の日である昭和六三年一一月二六日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるから、これと異なる原判決は本判決主文の限度で変更することとし、附帯控訴は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六七条、六一条、六四条本文、六五条一項本文を、仮執行の宣言につき同法二五九条一項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渋川満 裁判官 河野正実 佐賀義史)

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